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住宅業界の本音
高断熱住宅が増えた本当の理由
ここ数年、住宅業界では「高断熱住宅」という言葉をよく目にするようになりました。
ホームページでも、広告でも、多くの会社が「高断熱」をうたっています。
もちろん、断熱性能を高めることはとても重要です。
しかし、住宅業界の中にいる立場から正直に言うと、流行的に増えた「高断熱住宅」が必ずしも快適な住まいとは限りません。
なぜなら、高断熱住宅が増えた背景にはいくつかの理由があるからです。
今日はその「業界の本音」を少しお話ししたいと思います。
家づくりで性能を重視している方や、住宅会社の比較に悩まれている方に「高断熱住宅」裏側を知ってもらい、住宅の選び方のヒントにしていただけたら嬉しいです。
国の省エネ政策が大きく変わった
高断熱住宅が増えた背景にある最も大きな理由は、国の住宅政策です。
日本では近年、住宅の省エネ性能を高めるためにさまざまな制度が導入されています。
- 2016年~ ZEH(ゼッチ)補助金
- 2023年~ 住宅省エネキャンペーン
- 2025年 省エネ基準適合義務化
国がこうした制度を導入している目的は「2050年カーボンニュートラル」という環境目標達成です。
そのために補助金·義務化·基準引き上げなどを組み合わせ、住宅の省エネ性能を底上げしようとしています。
こうした背景から、断熱性能を重視する住宅会社が増えています。
高額な補助金メリットが後押し
高断熱住宅が増えた理由は、こうした制度の基準値をクリアした住宅を建てると、施主に補助のメリットがあるためです。
先ほどのうち、ZEH(ゼッチ)補助金や住宅省エネキャンペーンは、省エネ制度の高い住宅の建て主に向けて大きな額の補助金支給をおこなっています。
さらに、東京都では「東京ゼロエミ住宅普及促進事業」という助成事業がおこなわれ、国の補助額と併用して助成金を受け取ることができます。
【2026年の主な省エネ住宅支援制度】
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国の政策 |
補助額 |
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ZEH補助金 |
一戸あたり最大90万円 ※令和7年度受付終了 |
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みらいエコ住宅2026事業 |
一戸あたり最大125万円 |
| 東京ゼロエミ住宅普及促進事業 令和8年度 |
一戸あたり最大240万円 |
参考:ZEH補助金公式 ZEH Web
参考:東京都 東京ゼロエミ住宅認証制度
補助額が大きいので、家を建てようとしているご家族は当然ながら「高断熱住宅を建てられる会社」を選ぶようになります。
住宅会社はこうしたご家族に選んでもらえるよう、高断熱住宅を大きく広告に掲げています。
「高断熱」という言葉が広がった
高断熱住宅が増えたもうひとつの理由に、「高断熱」という言葉自体が一般的になったことが挙げられます。
ひと昔前はどちらかといえば大手ハウスメーカーの専門用語でしたが、今ではテレビCMやSNSでも当たり前のように登場します。
YouTuberが断熱性能を解説する動画は何十万回と再生され、「UA値」「C値」といった詳しい用語も勉強して家づくりを始める方も珍しくありません。
これは、家を選ぶ方々の知識が高まったという意味では、とても良いことです。
しかしながら、実は断熱材を入れるだけでは、本当に快適な家にはなりません。
高性能=快適な家とは限らない
言葉が広がると同時に「高断熱住宅」をうたう会社も急激に増えました。
しかし、高断熱仕様の住宅を建てたのに、窓の冷気で結露が発生し、カビの被害が多く報告されてきているのも事実です。
なぜなら、同じグレードの断熱材を使っていても、窓性能や気密性能によって家の快適さまったく違うものになるためです。
実際には
- 断熱材:種類·厚み·施工範囲
- 窓の種類:窓枠の素材·複層ガラス
- 気密性能(C値)
- 施工の精度
こうした総合的な要素が揃ってこそ、快適な住まいを実現できます。
壁や屋根にいくら厚みのある断熱材を入れても、窓がアルミサッシ+単板ガラスのままでは、窓から熱が逃げてしまいます。
また、いくら断熱材を充填しても、壁や天井のすき間から冷気が入り込んでいれば、暖かさを保つことはできません。
専門用語としての「高断熱」ではなく、快適な家とはなにかを考えることが大切です。
本当に大切なのは「施工品質」

どれだけ高い断熱材を使っていても、施工技術が伴わなければ「カタログ上の数字だけ」になってしまう可能性があります。
なぜなら断熱性能は、設計と施工の品質によって大きく変わるためです。
いくつかの例を挙げてみましょう。
気密測定をしているか
断熱材を分厚く入れても、壁や床に隙間があれば、暖かい空気や冷たい空気はそこから逃げていきます。
この隙間の少なさを表す数値である気密性能(C値)は、設計ではなく「実際の施工精度」によって決まります。
しかし、気密測定を全棟で実施している会社は、業界全体でもまだ少ないのが現状です。
断熱施工の精度
断熱材は、充填する技術者の腕によっておおきく性能が左右される部分です。
隙間なく均一に充填されてこそ、設計値に近い性能が発揮されます。
しかし施工が雑だと、断熱材が部分的に薄くなったり、抜けたりといった断熱欠損が生じます。
断熱欠損は、冷暖房効率を低下させるほか、壁内結露のリスクにもつながります。
国の基準だけでは快適さを測れない
国が補助金の条件にしている基準は、住宅性能の一部でしかありません。
たとえば真柄工務店では、国の定めるレベルの他に、窓の性能/換気計画/空調計画/壁内結露計算など、さまざまな施工品質基準を設けています。
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国が定めるレベル |
真柄工務店のレベル |
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断熱性能レベル(UA値) |
建築物省エネ法基準(断熱等級4) 6地域でUA値0.87以下 |
HEAT20のG2グレード超え(断熱等級6) 6地域でUA値0.34前後 |
|
気密性能レベル(C値) |
基準なし |
C値(相当隙間面積)0.2前後 |
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結露検討 |
検討なし |
結露計算での検討でクリア |
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サッシ仕様 |
樹脂アルミ枠 |
樹脂枠アルゴンLOW-E ペアガラス (オプション)樹脂枠アルゴンLOW-E トリプルガラス |
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冷暖房計画 |
基準なし |
家全体を暖房できる総合的な冷暖房計画 |
性能の高い家を建てるには、素材の選定と同じくらい、施工する「人」と「技術」が問われます。
こうした総合的な視点が設計されていなければ、数字上だけの性能になってしまいます。
家づくりは流行ではなく本質
住宅業界には、時代ごとにさまざまな流行があります。
過去には、経済停滞の中でローコスト住宅が注目を集め、その後はSNSの普及とともにデザイン住宅が人気を呼びました。
そして現在は、高断熱住宅が競争する時代を迎えています。
しかし私たちは、家づくりの本質は昔から変わらないと思っています。
家づくりとは、何十年も健康的に笑って過ごせる豊かな暮らしを設計することです。
豊かな暮らしを実現するには、高断熱性能だけでなく
- 強い構造
- 快適な室内環境
- 長く住める耐久性
などが欠かせません。
断熱性能だけを追い求めるのではなく、構造·室内環境·耐久性をバランスよく備えた住まいこそ、本当に価値のある家だと考えています。
真柄工務店の考える家づくり
私たちは、流行の言葉だけで家づくりをしていません。
構造/高断熱高気密/自然素材/デザインの4つを大切にしながら、一棟一棟丁寧に家づくりを行っています。
家は多くの方にとって 人生で最も大きな買い物です。
だからこそ、目に見えない部分まで誠実に向き合い、正直な家づくりを続けていきたいと思っています。
住宅業界に携わる人間の本音として、近年の「高断熱」住宅の背景·流行を見ていると、家づくりの本質が見失われているように感じます。
流行ではなく、本質で家をつくる。
それが、真柄工務店の考えるまっとうな家づくりです。