blog

  • 代表ブログ

地震建て替え保証の罠|震度・全壊・上限に隠された「家づくりの真実」

地震建て替え保証の罠|震度・全壊・上限に隠された「家づくりの真実」

「もし地震で家が壊れても、無料で建て直します!」

家づくりを検討中の方なら、一度はこの「地震建て替え保証」という言葉に心惹かれたことがあるのではないでしょうか。
30年、35年という長いローンを組む以上、万が一への備えがあるのはとても魅力的に見えます。

しかし、プロの視点から言わせていただくと「保証があるから安心」と考えるのは非常に危険です。

なぜなら、地震建て替え保証の仕組みには、パンフレットの小さな注釈に隠された大きな落とし穴があるからです。

今回は、地震建て替え保証の「3つの大きな落とし穴」と、本当に家族を守るために必要な視点についてお伝えします。

 

落とし穴①:震度7は対象外?「計測震度6.8」のカラクリ

多くの地震保証の規約には、ひっそりとこのような条件が書かれています。

計測震度6.8を超える地震による損害は適用外とする

「6.8なら、震度7も含まれるのでは?」と思うかもしれません。
しかし、ここに一つ目の落とし穴があります。

震度階級と計測震度は、実は完全にはリンクしていません。

 

気象庁が発表する「震度階級」は、震度0から震度7に分けられています。
この震度階級は、全国に整備した計測震度計によって観測される「計測震度」の値を元に発表されています。
地震保証の条件でも、計測震度の値が判断基準のひとつです

しかし、計測震度には7.0以上があるのに対し、震度階級は震度7が最強のクラスでありその上はありません。

 

震度階級 計測震度 震度階級 計測震度
0.5未満 5弱 4.5以上5.0未満
0.5以上1.5未満 5強 5.0以上5.5未満
1.5以上2.5未満 6弱 5.5以上6.0未満
2.5以上3.5未満 6強 6.0以上6.5未満
3.5以上4.5未満 6.5以上

参照:気象庁 計測震度の算出方法 より

 

「震度7」には上限がない

震度階級と計測震度の関係上、震度計で観測されるデジタル数値が7.0以上になっても、気象庁発表の震度階級は「7」になります。

つまり「6.8まで」という条件は「震度7の中でも比較的弱い揺れまでしか保証しません」と言っているのと同義なのです。

 

実際に、過去の巨大地震(熊本地震や能登半島地震など)では、計測震度7.0を超える激震が観測されています。

「本当に家が壊れるような大地震」のときには、保証が使えない可能性が極めて高いのが実態です。

 

落とし穴②:「全壊」という高すぎるハードル

ふたつ目の落とし穴は、保証の適用条件にあります。

保証が適用される条件のほとんどは、罹災証明書での「全壊」判定が必要です。

 しかし、この「全壊」という認定を受けるのは、想像以上にハードルが高いことをご存知でしょうか。

地震などによる全壊・半壊の基準は、内閣府の指針に基づき、家の延床面積に対する「損害割合」で判定されます。

【被害の程度と被害認定基準等】

被害の程度 認定基準 住家の損害割合
全壊 住家がその居住のための基本的機能を喪失したもの 50%以上
大規模半壊 大規模な補修を行わなければ当該住宅に居住することが困難なもの 40%以上 50%未満
半壊 住家の損壊が甚だしいが、補修すれば元通りに再使用できる 程度のもの 20%以上 40%未満

参照:「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」内閣府(防災担当)令和2年3月 よりP2・P8

全壊ではないグレーゾーンは保証されない

この損害割合50%以上とみなされるには、たとえば家の傾きが1/20(水平20㎝で1㎝の高さの差がある状態)以上と記載があります。

つまり

  • 家が傾き、生活が困難な状態でも「大規模半壊」
  • 一階が押しつぶされていても、一部の判定基準で「半壊」

といった判定になる可能性もあるのです。

「住み続けることはできないが、全壊ではない」
というグレーゾーンが非常に多い判断基準になっています。

「大規模半壊」や「半壊」と判定された場合は、建て替え保証の費用は1円も出ません。

「家は壊れた、ローンだけ残った、でも保証は使えない」
という最悪の事態が起こり得るのです。

 

落とし穴③:総額上限という「早い者勝ち」の現実

三つ目の落とし穴は、最も見落とされがちなポイントといえます。

地震保証ではほとんどの場合、個別の住宅に対する保証とは別に「保証会社が支払う総額の上限」が設定されています。

何棟分まで支払いが可能なのか

大地震は、あなたの家だけを襲うわけではありません。
同じハウスメーカーで建てた近隣の家も、同時に被災します。

仮に保証の上限が「10億円」に設定されていた場合、1棟4,000万円の家なら、わずか25棟分で予算は底をつきます。

想像してみてください。
もし同じエリアで100棟が被災したら? 

保証を受けられるのは、先着順か、あるいは全員が微々たる金額を分け合う形になるかもしれません。

「震源地に近いエリアに、その会社の家が多いほどリスクが高まる」という皮肉な構造になっているのです。

 

結論:保証は「お守り」、本当に必要なのは「性能」

誤解しないでいただきたいのは、保証自体が悪だと言いたいわけではありません。
万が一の際の「予備」として持っておく分には良いでしょう。

しかし、一番大切なのは「保証を使わなくてもいい家を建てること」です。

本当に安心な家づくりのチェックリスト

地震への備えを考えるなら、保証の有無よりも、地震に負けない性能になっているかをチェックすることをおすすめします。

新築を依頼する会社の建物について、以下の4つを確認しましょう。

 

チェック項目 内容
耐震等級3(最高等級)の取得 耐震等級1の1.5倍
防災拠点と同じ耐震性
許容応力度計算の実施 部材一つひとつの負荷まで構造計算
地盤調査と適切な改良工事の実施 建物が強くても、地盤が弱ければ家は傾く
直下率と壁の配置バランス 1階と2階の柱・壁の位置が揃っていることをチェック

 

本当に必要な「性能」とは

万が一地震が起こっても、建物が全壊も半壊もせず、それまで通り暮らせる家であることが大切だと考えています。
地震に負けない性能をチェックする最低限のポイントが、以下の4つです。

 

①耐震等級3(最高等級)の取得

耐震等級は、建物の地震への強さを3段階で表す国の基準です。
等級3が最も高く、等級1の1.5倍の耐震性があります。

警察署や消防署などの防災拠点と同等の強さが求められる耐震性です。

 

②「許容応力度計算」の実施

建物の構造計算方法には「壁量計算」「許容応力度計算(きょようおうりょくどけいさん)」の2種類があります。

  • 壁量計算:壁の量で耐震性を確認する簡易な計算方法
  • 許容応力度計算:地震力・風圧・建物の自重など多角的に考慮し、部材ごとにかかる力を詳細に計算する方法

壁量計算、配置やバランスは考慮されません。会社選びでは「どちらの計算方法を使っていますか」と聞いてみましょう。

 

③地盤調査と適切な改良

地盤とは、建物を支える地面のことです。
地盤調査で軟弱地盤だと判明した土地にそのまま家を建てると、将来的に沈下や傾きが発生する恐れがあります。

つまり地盤が弱ければ、住宅の耐震性をいくら高めても「長く住み続けられる家」は実現できません。

地盤調査を着工前におこない、結果に応じて適切な地盤改良をおこなう必要があります。

 

④直下率と壁の配置バランス

直下率(ちょっかりつ)とは、1階と2階の柱や壁の位置がどれだけ揃っているかを示す数値です。

上下階の耐力壁の配置が揃っていない、直下率の低い建物は、地震の力で構造がずれたり傾きが生じたりするリスクがあります。

 


地震保証に加入するか否かを迷う前に、建物が上記の条件を満たしているか、ぜひ確認してみてください。

 

最後に

地震が起きたとき、あなたと家族を守ってくれるのは、手元にある「保証書」ではありません。
その瞬間に頭上にある、柱と梁(はり)と基礎が、命を守ります。

「壊れたら直せるように保証する」ではなく「そもそも壊れない」家を建てることが、地震から家族を守るために必要な視点です
この本質にコストをかけることこそ、最も賢く、最も安上がりな地震対策になると考えています。

これから家づくりを始める方は、ぜひ「保証の条件」を疑う目を持って、住宅会社を選んでみてください。